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2001年11月7日 広島県 T.Y様


 T.Y様は10年位前にタンノイのアーデンマークUからアカペラのフィデリオに代えて、大改革をされました。その目的はお聴きになる音楽が殆どヴォーカル物中心ですから、大型スピーカーの地鳴りのするような迫力中心の鳴り方のものより、小型スピーカーで歌手が空間にポッと浮かび上がるようなリアリズム=(量より質)を表現出来る、「10センチ口径ぐらの物に、目を向けられたら如何でしょう?」という、私の提案から始まった事です。それでいて、なお且つ量感もそこそこ出るとなれば、このフィデリオに勝る物は無いと言っていいぐらい素晴らしい音のするスピーカーです。

ドイツ製アカペラのフィデリオ

 ユニットはデュアルボイスコイル方式ですから、小さな口径であってもかなりのスケール感が出ます。その理屈はバスレフダクトを下に空け、そこから出た低域のエネルギーを約20センチ幅の質のいいサクラの木を使ったスピーカースタンドによって両側からはさみ、効果的に増幅させる仕組みになっております。楽器の発想から出来た物でしょう、その音色はウッディ−でいつまで聴いていても飽きる事は無く、大変満足のいくものです。

独特の理論によるスピーカースタンド

 当時の値段で65万円ぐらいしたと記憶しております。年2回のボーナス時毎に少しずつ楽しみにグレードアップをしてこられました。今回は「こういう目的で」、ここを「こういう風にされては如何でしょう?」といった具合に段階を追って提案させて頂くわけですが、お客様の望まれる音をこちらが察知して、結果を出さなければ信頼は得られません。

ボーカルにはウエスタンの300Bが一番よく似合います

 10年前に、もうすでにオーラルシンフォニクスのACケーブル=M.Lキューブド(黒蛇)、1,8mで138,000円もするような高価な物を勇気を持って導入して頂いたりもしました。当事はまだ誰も名前すら知らない時です、私の方針は積極的に名も無い物であっても良いとなれば一生懸命訴えてきましたので、開拓者精神は誰にも負けないつもりです。そういう価値観で動いていますので数え切れない失敗や無駄遣いもありますが、その反面誰も知らない物で素晴らしい物を発見した時の喜びにはひときわ大きいものがあります。

 私にはそれらの開発者の立場と同じ気持ちになって考える事が出来ますので、その音を聴けばどんな意気込みで取り組んだのか、痛いほどその苦労や努力が伝わってくるのです。私もこの頃から物作りを始めましたので、このオーラルシンフォにクスからは大いに学ぶところがありました。

システムの全景

 それだけの惚れ込みようですから、全ての機材=(アナログプレーヤー、プリアンプ、パワーアンプ、CDトランスポート、DAコンバーター)にM.Lキューブドは使われています。その上、更に徹底している事はデジタル系とアナログ系を完全に独立させてキューブドのパワータップを導入している事です。ざっと計算しますとACケーブルだけで100万円を超えてしまいます。

アナログ専用電源タップ デジタル専用電源タップ

 信号系もデジタルケーブル(ローゼンクランツのDig-4EX)を除いて、全てオーラルシンフォにクスで統一してあります。T.Y様のシステムはこうした拘りようですから、瞬間に立ち上がるリアリズムは勿論の事、どんな場面にも余裕を持って反応出来ます。車で例えますと軽いウエィトのスポーツカーに4,000CCクラスのエンジンを積んでいるようなイメージです。

アナログプレーヤーはジャイロデック トランスポートとDAコンバーターはE.A.D

 また振動に関するインシュレーターについても当然の如く、7つのコンポ全てに3点支持で、ローゼンクランツのPB-REXを21個使って統一してあります。オーディオラックも響きの良い楓材を使ったローゼンクランツのAR-3を2台、勿論その脚の部分にもREXのメスで対応していますので万全です。このシステムの音の決め手はウエスタンの300Bを使ったローゼンクランツ製の完全無帰還A級シングルアンプにあります。ヴォーカルの生々しさはこたえられないほどリアルであり、その音楽信号のコントロール役はナチュラルなサウンドで定評のあるボルダーのL-3AEにまかせてあります。


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